「100年後に私みたいな人が大事にしてくれる様なアクセサリー」
そんな作品を作るクリエーターHanna Toyozumiさんにインタビューをしました。
Hanna Toyozumi
1983年 神奈川県出身
日系ブラジル人の母、音楽家の父の元に産まれる。
幼い頃から父の演奏や、海外遠征に同行し様々な国の文化に触れる。
又、母の故郷のブラジルファッションの影響を強く受け、服飾に興味を持つ。
2007年某アパレル会社で、オリジナルブランド企画デザイン、生産を担当。
2009年独立して「Andorinha」(アンドリーニャ)設立。
手に取った人が“この可愛さがわかるのは私しかいない”と感じることをコンセプトとして、
パーティーシーンを中心とした、オリジナルデザイン、オリジナルプリント、
生地のコレクションを展示。
傍らでOEM生産業を行い多種多様な生産背景を持つ。
ーーAndorinha(アンドリーニャ)というブランドの名前の由来は何ですか?
Hanna:私自身が日系ブラジル三世なんですけど、自分の母が色んな国を行き来して生活していたので渡り鳥みたいな人生だな、と思って。「Andorinha」ってポルトガル語でツバメっていう意味なんですけど、自分が色んな国の感性、思い、文化を反映したアクセサリーを作っていきたいな、と思って「Andorinha」という名前にしました。
ーーブランドロゴもツバメが描いてありますよね。
Hanna:今はブランドロゴにツバメは描いてないんですよ。ブランドロゴはハート型なんですけど、ツバメが上から下に飛んでるイメージで。あと、ツバメの顔をイメージしています。
ーーあれ?Hannaさんはツバメのイメージがすごくあったんですけど....
Hanna:前は作ってもらってました。でも正式にロゴにしたときは、あまり印象が強いものをロゴにするのは洋服とかになったときに使い勝手が良くないっていうので、ちょっと抽象的な形にしたんですよね。
ーーそうなんですね。自分でブランドを始めてどれくらい経つのですか?
Hanna:もう15年くらい経ちます。
ーー始めもアクセサリーから?
Hanna:もともと働いてた会社がアクセサリーの会社だったので、そこから独立して、ずっとアクセサリーのブランドをやってます。
ーー最初は工場に加工をお願いしてましたよね。
Hanna:そうですね。一応、服飾の専門学校は出てたんですけど、入った会社は自分で縫うとか自分で加工するとかは一切しないで、基本的に量産ベースなのでサンプルのうちから工場に作ってもらってました。そこで自分の手が入っちゃうと金額設定とかができなくなっちゃうので自分たちで作業はせず、最初から工場に作ってもらって、それをまた量産に乗せていくっていう会社だったのでデザインはやるんですけど、基本的には自分の手では一切作らなかったです。
ーーでも、なんで自分で作り始めたんですか?
Hanna:それがですね、そこの会社が、すごい運が良かったんですけど、職人さんとの付き合いをめちゃくちゃ大切にする会社だったんですよ。私はその会社が当然だと思っていたんですけど、他の会社に移ってみたりした経験から、今、ピラミッドみたいなのがあって、デザイナーとかメーカーが上にいて作る人たちがどんどん下になっていくっていう構図なんですよ。ほとんど製造業というのが。でも私が一番最初に入った会社っていうのはもう対等、もしくは職人さんの方が全然価値が上、っていう考え方。もう職人さんの機嫌を損ねたら自分たちは死ぬ、、、みたいな。なので職人さんとの付き合いをまず最初に叩き込まれたんですよ。そうすることによって、やっぱり職人さんも優先してくれるわけですよね。最終的には人付き合いなので。「あそこの製品を先に」とか「あそこのを綺麗に」とか優先してくれるようになるっていうのを社長がよく知ってて。それを社員に叩き込む会社だったんですよ。そこですごい教え込まれて。そうすると必然的に職人さんがすごい良くしてくれるから、仲良くなるじゃないですか。一緒にお昼連れてってくれたり。そうやって工場とかにも入れてくれたりして中を見せてくれたり。自分も作るのが好きだったのに急に会社に入って作らないってなると、なんかすごい手持ち無沙汰というか...。だから工場に行っていろいろ話聞いたり、作りのことを話してるうちにやっぱり自分で作る方が楽しいな、という感じになって。もちろん人にお願いして作ることってすごく大事なんですけど、やっぱり自分の手で作る喜びってすごいなと思って。最終的には独立してなるべく自分の手で作りたいと思いました。独立したときも職人さんたちと仲良いままで、今の自分があるのはその会社のおかげだなって本当に思ってます。今でも浅草橋とかでメッキ屋さんとかに急に会ったりして「よっ!」みたいな。普通だったらそんな関係性ってなかなかできないんで本当にあのときの会社のおかげです。
ーーHannaさんの人柄もありますよね。
Hanna:いや、その人柄を作るのはその会社だと思います。だってもう何て言うんのかな...。「やっとけ」みたいに(上かれ目線な態度で)教えられてたら自分もそうしちゃうんで。
ーーHannaさんは結構アクリル好きですよね。それはなぜですか?
Hanna:学生時代、古着屋さんで働いていたんですけど、そこでベークライトに出会うんです。これがもうほとんど100年とか、その時でも本当80年とか経っていて。みんなこれを買い漁るわけですよ。ひと財産つぎ込んでる人って山ほどいて、100年たってもこんなにかわいい物っていうのが、なんか古着界では憧れみたいな。結局服とかって朽ちていっちゃうんですけど、そんな中でもコスチュームジュエリーって息が長いものなので、その時代時代の特徴もあって。
ーーすごいですね。それは作るだけじゃなくて自身もコレクションとして好きなんですね。
Hanna:山ほど持ってます。私もひと財産つぎ込んでそれなりに持ってるんです。元々は生き物を殺して象牙とか毛皮で作ってた訳なんですけど、段々、技術が進化して、自然界から「プラスチック素材」を生み出すわけです。そこにロマンを感じちゃって。昔は新しいプラスチック素材を開発したら、国が懸賞金を出すみたいな。こぞってみんなやったわけですよ。プラスチックの魅力を世界中の人が感じてるってところが、私にはすごいズバッとくるですよ。やっぱり自分のアクセサリーもいつかは風化しちゃうんですけど、やっぱり100年後ぐらいに誰かがかわいいって言って持ち続けてくれたら嬉しいなと思ってこの素材を選びました。服はやっぱりすごく弱っていっちゃうものなので、悲しい存在なんですよね。でも私の中ではプラスチックって、いつまでも色褪せない魅力みたいなものがあってすごく自分の中では引かれ続けてます。
ーー素材の良さもあるけど職人のテクニックは素晴らしいですよね。
Hanna:今の時代に作れって言ったって、できる人いなかったり、時代が変わって薬品が危ないから作れなくなっちゃった物も。これ(写真一枚目右端)は戦闘機の窓ガラスを再利用して生まれた素材ですね。脱出するときに割れちゃうから割れないようにプラスチックになって、今度はプラスチックが堅すぎて、パイロットが脱出の時に首の骨を折っちゃうので、やめようっていうことになって大量にクリアの素材が余っちゃって、それをカットして可愛く生まれ変わった物です。全ての物って戦争で変化していくっていうので、そのロマンを感じてしまいますね。
ーーHannaさんのブランドのテーマはありますか?
Hanna:テーマはあります!「100年後に私みたいな人が大事にしてくれるアクセサリー!」。
ーー作品はほぼ自分で加工しているのですか?一部職人さんにも手伝ってもらったりしているのですか?
Hanna:最近はほぼ全部自分です。板を作ってもらうこと以外は自分で全部やってます。
ーー曲げ加工とかも?
Hanna:曲げも全部自分でやってます。
ーーすごいですね!
Hanna:頼むとできないこともいっぱいあるので。自分でやったからこそ、できる事と、持っていない技術の答え合わせみたいなところもありますね。
ーー素材にアクリルを選んでいるのには理由がありますか?
Hanna:ポリとかアクリルとか、いろんな職人さんと違うプラスチック製品を作ったんですけど、アクリルが出来上がったとき、可愛さが半端なくて。用途によっては割れやすかったりとかあるんですけど、それでもいいぐらい可愛い素材だな、と私は思ってます。
ーー作っていく中で一番大変なのって何ですか?
Hanna:曲げることですね。曲げが私は一番大変な作業だと思います。他との差って曲げることで出るんだなって思いました。差をつけるには、表情をつける曲げ以外に無いなって。曲げ加工はポリでは出せないですし、重ねるとかもポリではできない。ちょっとした表情が変えられるとか、曲げの角度でも可愛さが変わる。なんかそういう楽しさがあるかなと思います。
ーー今はどこで商品を売っていますか?
Hanna:自分のPOPUPイベントか、ネットショップで販売しています。
Hanna様、インタビュー有難うございました!
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